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TOMOYA NAKAGAWAのライフスタイル。根幹にある“遊び心”や“好奇心”。

BjörkやBad Bunnyなど世界的なアーティストやブランドから、NewJeansやXGといったK-POPアイコンまでコラボレーションの依頼を受ける、ネイリストでSFX & 3DアーティストのTOMOYA NAKAGAWA。インタビューの前編では、ニューヨークを拠点に国内外で活躍する彼の原点、ネイリストを志したきっかけ、受けた影響や他者との“交差”などに迫った。インタビューの後編では、TOMOYA NAKAGAWAのライフスタイルの根幹にある、“遊び心”や“好奇心”に焦点を当てる。作品を生む上でのインスピレーション、好きなものやこだわり、興味を持ったトレンド、そして思い描く未来まで。語られる言葉からは、彼の魅力が自然と浮かび上がってきた。

住む場所と異世代がインスピレーションの源

最近の活動の中で大きかった出来事はありますか?

去年から始めたニューヨークでのサロンワークですかね。始めた当初は英語もまだまだで、回転率の速さも違うし、サロン以外の仕事もあったので、なかなかサロンワークになじめず。それでも今年に入ってからは少しずつコツがつかめてきて、作業自体のスピードも上がってきましたし、最初はワンカラーのシンプルなネイルしかできなかったのが、今では複雑なアートを取り入れたネイルもできるようになってきました。

 

クライアントからお題をいただいて、カスタムでネイルやヘッドピースなどを作るのはもちろん楽しいけれど、自分のことを知ってくれている現場に行くと、いろいろなメディアに出させてもらった影響からか、“先生”みたいに言われることもあって。ありがたいことですが「まだまだ自分はそんなんじゃないのにな」と思っていますし、サロンだと僕のことを知らないお客さんが来るので、純粋な反応を受けられるリアルさが楽しいですね。

今のライフスタイルの中で、大切にしていることはありますか?

本当に最近まで、2年ぐらいちゃんと休んでいませんでした。パソコンはいつも開いていて、抜き方をあまり知らなかったけれど、今年に入ってからはそれが少し変わって。日本でも塗装ができるアシスタントがいたり、アメリカでもパーツを磨く作業を手伝ってくれる同僚がいたりして、協力をしてくれる人がすごく増えました。それによって、去年までの制作でピリピリしていたような感覚がなくなってきたと思います。

 

デザインをどこでもできる環境を作れるようになって、今回も日本で2日間ぐらいオフの時間が取れたので、漁師をしていた街を訪れて、久しぶりに漁をやれて。そういうことも去年だったらできていなかったと思いますし、リラックスできる時間が増えましたね。

作品を生むうえで、何からインスピレーションを受けますか?

作るものに関しては、具体的なモノからインスピレーションを受ける意識はあまりなくて、どちらかという瞬間的なアイデアに近いですね。あと自分の場合は、住む場所を変えることがインスピレーションのもとになってきたように感じます。その感覚があったので、あえていろいろなところに住むことを試している時期もありました。

 

例えば初めのニューヨーク滞在から帰ったときは東京ではなく熱海を選びました、そこで半年ぐらい過ごしながら海外の依頼もこなしていたり。でも自分的には、やっぱり海外を拠点にしたいと思って、ひとりでLAに行ったこともありました。するとそこで生まれた作品がまったく違う表現で作れたり。場所を変えるとこんなふうに作風が変わるんだってことを知りましたし、チャンスも含めていろいろなめぐり逢いが起こるので、それが作品作りで一番大きいと思っています。

ファッションや好きなもののこだわりがあれば教えてください。

ファッションは、実は短パンにTシャツ、何も気にしなければビーサンが一番好きなスタイル(笑)。服はシンプルですかね。だけどあえて言うのなら、90年代後半から2000年代のものが好きで、当時のOakleyやNIKEのアイテムなどは集めています。

 

持ち物へのこだわりはそれほどない方ですね。今はニューヨークでサロンワークをしているので、先ほど場所を変える話をしましたが、NYを拠点に落ち着きたい気持ちもあって。これまでは引っ越すことが多かったので、家の中には仕事道具と洋服ぐらいしかなかったのですが、最近は家具を買うとか、自分の空間を作っていくことを少しだけ始めました。拠点が定まると、好きなものが増えていきますね。

個人的に最近ハマっていることや興味があることは?

最近はアメリカ国内で旅行をするのに興味があります。州によっていろいろなカルチャーがあったり、自然や建物などもさまざまです。この間はワイオミング州に滞在したのですが、バッドランズで野生のバイソンの群を見たり、デビルズタワーにトレッキングに行ったりして楽しみました。

 

あと若い友人と会うのが楽しいですね。昔からの友達とかに会うとやっぱり懐かしいですし、遊びに行くと思い出話はたくさんあるのですが、若い友人と遊んでいると自分の知らないことをやっていて、自分の知っていることを共有し合えるのがいいんです。

ネイルも立体も音楽も。好きなことを続けていく。

トレンド感度が高い人たちとの仕事も多い中で、そういうプライベートでの出会いも良い影響になりそうですね。

そうですね。東京の若い友人がやっているブランドなどは、やっぱり同年代と遊んでいたら知り得ないというか、もう知ったころには遅いよみたいな(笑)。そのために若い友人と遊んでいるわけではないけれど、そういう世代と会うと、すごく良い刺激になるなと感じます。

 

あるコミュニティで巻き起こっていることを知れるというのは、自分にとってすごく新鮮ですね。自分のころと違ってインターネットで調べるのが当たり前の世代は、自分とはまったく違う感性を持っていて、柔軟性もある印象を受けます。逆に自分もアメリカで流行っていることとかをいろいろ教えたり、お互いに情報交換できたりするのは楽しいです。

今後チャレンジしていきたいことや、思い描く理想像は?

スタンスは今のままでいいと思っていますが、近い未来でチャレンジしたいものだと、キャラクターのデザインやオブジェ。身に着けるものではなく立体を作っていきたいです。最近、そういった置いて飾れるもののデザインを始めたら、すごく楽しいので、どんどん形にしていきたいです。

いずれ個展なんかもできるかもしれませんね?

展示にも興味がないわけではないですが、本格的にやるとなると、そのために作品づくりをすることになるので。自分としてはその作業が不自然というか、今はサロンワークもあるので、その余裕もないのはありますが。ネイルに関してはやっぱり、相手に付けてもらって完成するものなので、「展示で飾ってあるだけでは」という気持ちもあるんです。それでも少し前に、オブジェのような感じで360度どこから見ても面白いというか、光が当たってキレイに見える表現ができて。そういう作品を今後増やしていけたら、展示とかもやってみたいですね。

 

あとネイルは関係ないですが、少し前に曲を出しました(5月5日に1st single『MK5』をリリース)。それもとても良い経験でした。音楽活動をがっつりはできないけれど、機会があればまたやりたい。あとはまわりの若い友人に影響を受けて俳優も面白そうだなとか、こわもての役とかね(笑)。10年後も今と同じように、好きなことを続けていきたいです。

TOMOYA NAKAGAWAが依頼を受けるビッグネームのアーティストだけを見ると、遠く離れた存在のように感じるが、彼のパーソナルの部分を知ると、実に人間味があることに気づく。自分の感覚を信じて世界中を飛び回り、住む場所を変え、その土地土地でさまざまな出会いを繰り返す。そうして得た感性をもとに、TOMOYA NAKAGAWAは文字通りオリジナルの作品を生み出していく。この稀有なアーティストのライフスタイルはこの先もきっと、偶然の出会いと、それを楽しむ純な心に満ちているはず。

 

公式Instagram >

 

Photo:Ryoma Kawakami

Interview&Text:ラスカル(NaNo.works)

TOMOYA NAKAGAWA

東京都生まれ。 現在NYを拠点にネイリスト、SFX&3Dアーティストとして活動。 世界中のアイドル、アーティスト、セレブリティ、メゾンなど幅広く手掛けるクリエイター。